近年、オフィスのデザインは多様な働き方とともに見直されており、主にレイアウトや壁の意匠などを中心に考えられることが多いです。しかし、忘れがちな天井のデザインを考えることで、空間のおしゃれ度はグッと上がり、最近ではカフェのようなスケルトン天井を取り入れる企業も増えています。
通常のオフィスの天井は天井パネルに蛍光灯やLEDの照明と空調が付いたタイプがほとんどです。その天井パネルを抜いてダクトを剥き出しにしたスケルトン天井は、天井を抜くことで天井高が上がり、開放感を感じられやすくなります。また、オフィスっぽさをなくすことで居心地よく働くことができ、スタッフの想像力やモチベーションアップに繋がります。
この記事では、「オフィスの天井をかっこよくしたい」「スケルトン天井に興味がある」と考えている方に向けて、スケルトン天井にはどのようなタイプのデザインがあるのか、おしゃれな天井を持つオフィスの事例を紹介していきます。
同系色で塗装されたスケルトン天井
まず、同系色で塗装されたスケルトン天井を紹介します。通常、天井を抜くと、天井裏のダクトや換気扇、配管など金属のシルバー色がそのまま露出します。しかし、この写真の事例では、天井の見える部分をすべて白で塗装することで、統一感が出て開放感のあるスッキリとした印象を与えています。すべて白に塗装することで汚れも隠すことができ、清潔感を保てて、まさに一石二鳥ですね。
アクセントカラーを活かしたスケルトン天井
続いて、アクセントカラーを活かしたスケルトン天井の事例です。天井裏のダクトや配管は、本来の金属のシルバー色で表わしており、一部の配管を塗装することでメリハリのある空間になります。
この写真の事例では、床に置いてあるキャビネットの黄色と合わせることで、スケルトン天井ならではの無骨な雰囲気を持たせながらも、インパクトのある空間にしています。
空間ごとにイメージを変える、スケルトン天井
続いて、部分的にスケルトン天井にした事例を見てみましょう。この写真の事例では、通路兼ソファスペースとワークスペースのエリアを分けて、通路側の天井だけを抜いています。こうすることで、高低差がつき、空間のイメージに変化を与えます。
また、スケルトン天井にする場合は既存照明を外してしまうことになります。例えば待合室や休憩スペースなど人が集まる空間をスケルトン天井とし、カフェのようなペンダントライトを設けることで空間の雰囲気を変えることができます。
デスク上のみ天井を設置したスケルトン天井
この事例は、すべてスケルトン天井だった空間にデスクがあるワークスペースの部分のみ、天井と照明を設けています。近年建てられたオフィスの天井高は、フロア面積によって異なりますが、2.8メートル以上確保されていることがほとんどです。
仕事をする場合、座って作業するため、この事例のように、デスクがある部分に天井を設けることで、資料やパソコンを見るとき、影にならないよう照度に考慮できます。
また、一般的なオフィスでは、埋め込みタイプのベースライトと呼ばれる照明器具が付けられています。しかし、スケルトン天井の場合だと、バー状に取り付けられたダクトレールの照明器具がほとんどで、ベースライトのような照明器具だとつけられないことが多いため、天井を設けるとよいでしょう。
ルーバーを設けたスケルトン天井
こちらは、スケルトン天井にルーバーを設けたオフィスです。デスク上のワークスペースにルーバーを設けることで、スタイリッシュな空間へと導いてくれます。これは、見た目がかっこいいといったデザイン面だけではなく、直接空調が当たらないといった実用的なメリットもあります。
注意点
不特定多数の方が使用するオフィスでは、建設当初に消防検査を受けています。消防法に基づき、万が一火事などが発生したときの対処法として、各居室に火災報知器や排煙設備などが設けられている場合がほとんどです。そのため、ルーバーを設置する際は、事前にこれらのことを踏まえながら消防に許可を取る必要があります。勝手にDIYなどで取り付けてはいけないので、注意しましょう。
照明器具とルーバーを融合させたスケルトン天井
続いて、ルーバーデザインを生かした事例を紹介しましょう。こちらは、天井を一度スケルトンにした上で、吊り下げルーバーを等間隔に設けています。さらにルーバーの間には同じ長さの吊り下げ照明器具を設け、リズムのあるデザインへと演出しています。天井ルーバーはダクトや配管などを上手に隠しており、壁面のクロスやパーテーションなどに使用されている青色をルーバーにも取り入れることで、統一感のある美しいオフィス空間へと導いてくれます。
化粧梁を活かした天井
こちらは、化粧梁を活かした天井の事例です。照明器具と同系色の黒に塗装した化粧梁が、シンプルでありながら天井のアクセントとなっています。大きな窓(開口部)に対して、化粧梁と作業用デスクが直行しており、スッキリとした印象を与えています。梁は何かと邪魔もの扱いされがちですが、塗装することで空間のアクセントカラーとなり、心地よい空間をつくってくれます。
格子状にデザインされた天井
この写真は、日本文化の“和”として格子状にデザインされた天井の事例です。天井の仕上げは黒く、梁は明るいナチュラルな色味の木材で縦横に区切られているので、開放感を感じながらも日本家屋を思わせる雰囲気があります。中央の照明も襖を彷彿させるデザインとなっています。
倉庫や体育館などの物件を活かしたスケルトン天井
これまでご紹介してきたオフィスのように、”もともとある天井を壊してスケルトン天井にする”、”さらにそこに新しい天井を貼る”となるとその分工事費用が高くなってしまいます。天井工事は既存の建物の状態によって工事費が異なり、物件の状態やイメージする計画により工事費用が異るためです。
反対にこの写真の事例のように、最初から倉庫のような天井高の高い開放感のあるかっこいい物件を選ぶと天井にかかる工事費用を抑えることができます。元体育館、元講堂、元倉庫、古民家など古い建物を選ぶと味のある物件が見つかりやすくなりますよ。特に倉庫のような物件では、空間の広さから自由度が高いため、理想のスケルトン天井をつくりやすくなるでしょう。
しかし、こうした建物はオフィス用として建てられていないため、隙間風や設備、立地、音漏れなど通常のオフィスでは起きない問題が起こることもあります。よく考えてから契約をしましょう。
ワンポイントで空間を彩るシンプルな天井
最後に、ワンポイントで空間を彩るシンプルな天井を紹介します。この写真の事例は、一般的なオフィス天井で、イメージを変えたい場所にワンポイントとなる照明を設けています。このようにすることで、シンボリックなフォルムのある照明が看板代わりとなり、人が集まりやすい空間を演出してくれます。休憩スペースとしてもミーティングスペースとしても、どんな場所でも簡単にイメージを変えることができます。天井にペンダントライトを一つ追加するだけなので、工事費用も抑えることができます。
まとめ
スケルトン天井の魅力は、おしゃれな空間を作るだけではなく、スタッフのパフォーマンスを上げるために必要な空間デザインです。よい空間を演出するためにも、さまざまな事例があることを紹介しました。
通常見えない天井裏のダクトや換気扇、配管などを活かして塗装することで、オフィスを開放感や味のある空間へと変化させる良さがあります。また、家具などの色味と合わせることで空間全体が統一されて、スッキリとした印象を持たせることもできます。場所によっては、デスクワークなど仕事をする場所のみ天井を設け、ポイントとなる照明を付けるだけで作業効率も上がったり、看板などの目印がなくても、自然と人の流れをつくることもできます。
本記事で紹介したさまざまな事例を参考にしていただきながら、理想のスケルトン天井を探してみてください。