天井をなくすことで、開放的な空間を演出できるスケルトン天井。広くて開放感のあるおしゃれなオフィスは近年とても人気があり、リノベーションを行うオフィスも増えています。
天井を無くす工事は一見簡単そうに見えますが、天井には排煙設備が設置されています。これらの設置には法的根拠があり、諸官庁との協議のうえ設置されているため、オフィスをスケルトン天井に改修する際やスケルトン天井のオフィスを新設する際は十分注意が必要です。
この記事では、排煙設備についての説明やスケルトン天井にする際の注意点について解説していきます。
排煙設備とは
排煙設備とは漢字から連想されるように、「煙を排出する設備」です。火災発生時に建物内部に充満する煙を効率的に屋外に排出することで、消火活動を容易にするためのものです。火災発生時に使う設備という特性上、建築基準法、消防法により設置基準が設けられています。
排煙方式の種類
排煙方式には自然排煙と機械排煙の2種類があります。それぞれ特徴があり、建物用途や規模によって選定されます。
自然排煙
煙が上昇するという性質を活かして、外に面する建物の窓やガラリ(外の空気と室内の空気が出入りする通気口のこと)から煙を建物の外に出す方法です。電気による制御がない点が特徴です。
<メリット>
- 排煙に必要な電源が不要となるため、停電による機能停止の心配がない
- 通常時も換気用の窓、ガラリとして使用できる
<デメリット>
- 機械で強制排煙をしないため、排煙能力が低い
- 大規模な建物には採用できない
機械排煙
排煙口から煙を吸い込み、ダクトを通って、屋外に面する排気用のガラリから建物の外へと排出する方法です。煙感知器によって火災を認識し、排煙ファンを運転する事で、煙を建物外へ流します。
<メリット>
- 排煙することに特化した方式のため、排煙能力がとても高い
- 排煙ダクトを配置することで、窓がない部屋や地下といった普段換気できない部屋でも採用できる
<デメリット>
- 排煙ダクトが通るルートに大きなスペースが必要となってしまうため、改修時に増設することは難しい
- 窓やガラリの設置だけで済む自然換気設備に比べると高価
排煙設備の設置基準
排煙設備の設置基準は様々ありますが、オフィス等の事務所における排煙設備の設置基準は以下の①〜④のいずれかを満たした場合となります。スケルトン天井に改装するにあたっては下記条件を満たす建物なのか確認が必要です。
①特殊建築物で延べ面積が500㎡を超えるもの
※特殊建築物とは主に不特定多数の人が利用することが想定される建物(店舗、宿泊施設等)を指します。スケルトン天井に改修するオフィスがホテル+事務所といった複合施設になっている場合は該当する場合があるため、詳細はリンク先にて確認をお願いいたします。
②建物が3階以上の延べ床面積が500㎡を超えるもの
500㎡超える建築物には排煙設備の設置が義務づけられています。
③延床面積1000㎡を超える建築物のうち200㎡を超えるオフィス(居室)
200㎡を超える比較的広いオフィス(居室)には換気設備が必要となります。
④排煙上有効な開口部面積の合計が、床面積の1/50以下である居室
排煙に有効な開口部の面積がオフィス(居室)の床面積の1/50以下の場合
①、②に関しては建物自体の用途や規模の話になるため、そもそも排煙設備が設置されているケースがほとんどです。
③、④に関してはオフィス(居室)の規模や開口部の有無が判断されます。部屋を広く改修したりした場合は床面積や開口部の割合が変わるため、特に注意が必要です。
スケルトン天井での排煙設備の注意点
排煙設備について理解したところで、次に実際にスケルトン天井にする際の排煙設備設置に関してどのような点に注意をすればよいかを見ていきましょう。
機械排煙があるかないかの確認
入居する建物が大規模の場合、上で述べたように機械排煙設備が設置されている可能性が高いです。スケルトン天井にする前に天井に排煙口があるのか、天井裏にダクトがあるのかをオーナーや管理会社等に確認しておく必要があります。
改修の際はそれらの機能を妨害しないようにすることが重要です。
機械排煙でない場合
前提として排煙に有効とされる窓は天井面から80cm以内(画像1)とされています。そのため天井がある場合だと成り立っていた部屋がスケルトン天井になると天井がスラブ面(上階の躯体部分)と見なされることから排煙窓の有効が取れないことがあります。ただ完成している建物に新しく排煙設備を新設することは難しいことが多いのが実情です。そのため、「建設省告示1436号」に則り、排煙設備を免除されるように対策を検討する場合があります。
排煙設備が免除されるケース
オフィス(居室)における排煙設備の免除条件は建設省告示1436号において以下のように記載されています。
①地上高31m以下にある「居室」(特殊建築物の地階は除く)の場合
- 天井・壁面の内装仕上げが準不燃材料になっている
- 床及び壁の区画が準耐火構造になっている
- 主要な出入口に防火設備を設置している
※居室…人が生活するのにおいて長時間滞在を想定される部屋のこと
オフィスは仕事の大部分を過ごす場所なので居室に該当します。上の記載にある通りに改修する際には壁や床の材料について準耐火・準不燃のものとする必要があります。
準耐火構造及び準不燃材料については国土交通省からも基準が出ておりますので詳細はそちらでご確認ください。
※以下国土交通省リンク
00006703.pdf (mlit.go.jp)
00006466.pdf (mlit.go.jp)
それでもご不安・ご不明な際はオフィス改修の業者や設計事務所等のプロに確認をとると良いでしょう。
②地上高31m以下にある「室」(特殊建築物の地階は除く)かつ100㎡以下の床面積の場合
- 壁面の下地及び仕上げ材が不燃材料になっている
- 天井面から50㎝以上の防煙垂れ壁(防煙壁)が設置されている
室…建物で壁、天井、床で仕切られた空間のこと。
100㎡の床面積の場合だと先ほどよりも条件が厳しく、準不燃から不燃材を使用するようになっています。避難上の観点から出入口以外は不燃材料で仕上げると良いとされています。
③地上高31mを超える居室の場合
- 天井・壁面の内装仕上げが準不燃材料になっている
- 床及び壁の区画が耐火構造になっている
- 主要な出入口に防火設備を設置している
地上高31mを超える高層階のオフィスは特に厳しく、建物自体が耐火構造になっていることが条件になります。主要となる出入口に防火設備(火に耐えられる建具のこと)とする計画を立てるようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、排煙設備について記載しました。スケルトン天井にする際は機械排煙がある場合はその機能を妨害せずに、自然排煙がある場合は、有効窓の高さと面積の関係性を十分留意した上で改修するようにしましょう。