オフィスづくり

バーチャルオフィスとは?メリット・デメリットを詳しく解説

働き方の多様化にともない、オフィスは必ずしも不可欠な存在ではなくなってきています。特に、少人数の企業やスタートアップ企業の場合は、物理的にもオフィス空間が不要な場合もあります。

レンタルオフィスは一つの代替案ですが、不必要なオフィスのためにかかるコストは無駄となるでしょう。この問題を解決し、オフィス機能とコスト削減を両立できるのがバーチャルオフィスです。

本記事では、バーチャルオフィスのメリット・デメリットについて詳しく解説します。

バーチャルオフィスとは

バーチャルオフィスとは、仮想オフィスサービスのことです。物理的なオフィススペースなしに、住所や電話番号だけでなく、各種オフィス機能を利用することができます。

自宅やクライアント先での仕事が中心の場合、オフィスは不必要です。しかし、オフィスの有無は合理性だけで判断できず、ビジネスにおいては住所や電話番号が社会的信用に繋がる効果もあります。

物理的なオフィススペースは不要だが、住所や電話番号、さらに一部の必要なオフィス機能だけ欲しい。こうしたニーズに応える形で登場したのが、バーチャルオフィスです。レンタルオフィスよりもさらに柔軟性に優れ、コスト削減効果も期待できます。

銀行で法人口座開設も可能

バーチャルオフィスで利用できるのは架空ではなく実在の住所なため、社会的信用度が著しく劣ることはありません。そのため、銀行での法人口座開設も可能です。

銀行での法人口座開設が難しいケースもありますが、その原因は必ずしもバーチャルオフィスだからではありません。しかしながら、バーチャルオフィスの住所が犯罪に利用された事例があり、銀行側でより厳しく審査される懸念はあります。実際に犯罪に利用されたバーチャルオフィスの場合は、銀行での法人口座開設は困難でしょう。

また、実態が掴みづらいバーチャルオフィスを敬遠してか信用金庫や一部のネット銀行など銀行種別によってもバーチャルオフィスでの口座開設ができないケースもあります。少しでも口座開設の可能性を高めるため、バーチャルオフィスでの口座開設実績のある銀行に申請するようにしましょう。そして、特に実績の少ない会社の場合は代表者の信用が物を言います。銀行へ赴いた際の身なり含めた対応、経歴や活動実績を元に審査がなされるので、そのことを念頭に起業時の準備を進めていきましょう。

社会保険や雇用保険にも加入できる

従業員が社長のみの企業でも、社会保険への加入が義務となっています。社会保険だけでなく、雇用保険に加入する際も、バーチャルオフィスの住所を記載することが可能です。

バーチャルオフィスのメリット

初期費用の削減効果

バーチャルオフィスは物理的なオフィススペースがないため、敷金や礼金さらにオフィス家具など、通常のオフィスに必要な初期費用を全て削減できます。レンタルオフィスとの比較でも、コスト面ではバーチャルオフィスの方がメリットが大きいです。

都心一等地の住所で法人登記できる

バーチャルオフィスでは、都心一等地の住所を選んで登記することができます。オフィスの住所にはブランド的要素もあり、一等地であればクライアントに良い印象を与える効果が期待できます。

通常の場合、都心の一等地にオフィスを構えるとコストが高くなりますが、バーチャルオフィスならその心配もありません。低コストでブランディングできる点も、バーチャルオフィスのメリットです。

必要なオフィス機能だけを必要な時に利用できる

バーチャルオフィスは、必要な時にだけ、オフィス機能を選択して利用することができます。例えば会議室やFAXなど、日常的に使用しないオフィス機能は、自社で所有すると無駄なコストになってしまいます。

こうした一時的に使用したいオフィス機能も、バーチャルオフィスのサービスに含まれており、コストを抑えながらもスタイルに応じて柔軟に利用できる点もメリットです。

自宅住所を使用する必要がない

自宅住所を使用する必要がない点は、プライバシー保護の面でメリットがあります。加えて、通信販売に必要な特定商取引法表示にも、バーチャルオフィスの住所が記載できます。

自宅を中心にビジネスを行う場合、不特定多数に住所を公開するのはセキュリティの面で大きな問題があります。バーチャルオフィスの住所を利用することには、ブランディングだけでなく、プライバシーを守る効果もあるのです。

バーチャルオフィスのデメリット

官公庁の許認可が得られない場合がある

物理的なオフィス空間や設備が求められるような業態では、一部で官公庁の認可が得られない場合があります。例えば士業の場合、会計士、社会保険労務士、中小企業診断士、弁理士はバーチャルオフィスでも対応可能ですが、弁護士、司法書士、税理士は困難な可能性が高いです。

また、有料職業紹介事業、宅地建物取引業、中古リサイクル業(古物商)のような業態もバーチャルオフィスだと許認可を得るのは困難です。そのため、開業に際しては、バーチャルオフィスで許認可を得られるかを事前に官公庁に問い合わせるのをおすすめします。

他社と住所が重複する可能性がある

バーチャルオフィスのデメリットには、他社と住所が重複する可能性が挙げられます。人気の高い住所を他社と共有する場合、クライアントが混同したり不審に思う懸念があるでしょう。

現代では、企業についてインターネットで調べるのは当たり前のこととなっています。他社と住所が重複すると、検索結果に自社以外の会社が表示されたり、他社の方が上位表示される可能性もあります。バーチャルオフィスを利用する場合は、住所が他社と重複しないように配慮が必要です。

急な来客への対応が困難

バーチャルオフィスには、来客への対応を行ってくれるサービスが含まれるものもあります。しかし、急な来客に代表者の対応が必要なケースには不十分です。

バーチャルオフィスの住所には、オフィスも従業員も実在しません。急な来客への対応が必要な場合は、別の連絡窓口を用意しておくのがおすすめです。

バーチャルオフィスでできること、できないこと

バーチャルオフィスでできること

住所の貸出し

都心の一等地など、ブランド力を高められる住所を選ぶことができます。

電話番号の貸出し(03や0120など)

社会的信用を得やすい、市外局番03といった固定電話番号やフリーダイヤルを利用することも可能です。

秘書業務代行(郵便物や電話の転送など)

バーチャルオフィスの住所を利用すると、郵便物や電話もサービス側に届くようになります。バーチャルオフィスのサービスには、郵便物や電話の転送、書類の保管や受け渡しなど、秘書業務の代行も含まれています。

会議室の貸出し

必要な時だけ、バーチャルオフィスで提供される会議室をレンタルすることも可能です。費用については、無料か有料かはサービスによって異なるので、あらかじめサービス内容を確認しておきましょう。

法人登記代行

バーチャルオフィスには、法人登記の代行にも対応しているサービスがあります。それはバーチャルオフィスのユーザーの多くが、法人登記の目的で貸出しされた住所を利用するからです。

FAXの貸出し

インターネットを利用した連絡が主流ですが、まだFAXが必要になる場面もあります。バーチャルオフィスではFAXの貸出しにも対応しており、FAX購入費用は不要です。

WEB制作代行

起業するとホームページが必要になりますが、従業員の少ない企業ではなかなか手が回らず対応できないケースも出てきます。こうしたニーズに応え、バーチャルオフィスにはWEB制作代行にも対応しているサービスが多いです。そのため、スムーズかつスピーディーに起業し、事業に専念することができます。

特定商取引法表示

バーチャルオフィスで貸出される住所は、通信販売などで必要になる特定商取引法表示に記載することが可能です。

バーチャルオフィスでできないこと

バーチャルオフィスでは、日常的な執務室やデスクの利用には対応していません。それは、バーチャルオフィスが、物理的なオフィススペースを必要としないユーザーをターゲットにしているサービスだからです。バーチャルオフィスを利用する場合、職場は別に用意する必要があります。

まとめ

バーチャルオフィスのメリット・デメリットについて解説しました。

バーチャルオフィスとは、物理的なオフィススペースなしに、住所や電話番号に加え、各種オフィス機能を利用できるサービスです。

通常のオフィスやレンタルオフィスと異なり、物理的なオフィススペースがないため、初期費用やランニングコストを大幅に削減することができます。住所にはブランド力のある都心一等地を選べ、自宅住所を使用する必要がないためプライバシー保護の面でもメリットがあります。

一方で、業態によってはバーチャルオフィスの住所では官公庁の許認可が得られない場合もあります。開業の際には、事前に問い合わせて確認されるのがおすすめです。

バーチャルオフィスはその性質から、個人事業主やフリーランス、従業員の少ないスタートアップ企業のような小規模の企業に向いています。また、自宅を中心にしてビジネスを行いたいが自宅住所を登記したくない場合や、都心一等地の住所をブランディング目的で取得したい用途にも適しています。

本記事が、起業の準備中でオフィスについて検討されている方のお役に立てれば幸いです。