新型コロナウイルスの影響により、テレワークや時差出勤を取り入れる企業が増え、人々の働き方に大きな変化が起こっています。
こうした働き方の多様化により、人々の働く場であるオフィスのあり方にも変化が求められています。景気対策のみでなく、社会的なニーズなどを考慮し、オフィスの移転・縮小化に乗り出した企業も少なくありません。
ところでオフィスの移転には、通常のオフィス移転、居抜きでのオフィス移転のほか、「セットアップオフィス」という選択肢があることをご存知でしょうか?比較的新しい移転方法ですので、知らない人も多いかもしれません。
そこでこの記事では、セットアップオフィスの内容を知りたい人に向けて、ほかの移転方法との違いや、メリット・デメリット、居抜きオフィスとの違いについて解説していきます。
セットアップオフィスとは
「セットアップオフィス」とは、ビルオーナー側であらかじめ貸室のレイアウト工事を行い、テナント側で手を加えなくても入居可能な状態にしたうえで引き渡す方法です。
一般的なオフィスに必要となる執務スペース、応接室、会議室、ラウンジといった空間を作るほか、什器や備品なども前もって用意しておきます。様々な企業に対応できるよう、奇抜なデザインにはせず、機能性・汎用性の高いレイアウトにすることが多いです。
移転にかかる時間や費用を削減したい企業に向いている方法で、特に会社が安定するまで設備投資や人件費にたくさんの費用を要するスタートアップ、ベンチャー企業などにおすすめです。
通常のオフィスや居抜きオフィスとの違い
通常のオフィスおよび居抜きオフィスと、セットアップオフィスとの違いについて、具体的に説明します。
通常のオフィス移転の場合
通常のオフィス移転の場合、移転先オフィスのレイアウト設計を考えなければなりません。工事業者との打合せや、移転先のビルオーナーや管理会社との調整も必要で、自由にプランニングできる反面、やることが多く、かなりの時間と費用を要します。
居抜きオフィスに移転する場合
一方、居抜きオフィスに移転する場合、前テナントが残した内装、什器、備品などをそのまま引き継ぎますので、入居工事を簡略化でき、テナントの意向によっては、まったく必要ない場合もあります。そのため、セットアップオフィスと同様、時間と費用を極力削減したい企業に向いている方法です。
しかし居抜きオフィスの場合、前テナントが使用したものを引き継ぎますので、あるものは基本的に中古品であり、最新の設備が整った真新しいオフィスなどは期待できない点に注意しましょう。
セットアップオフィスに移転する場合
対して、セットアップオフィスに移転する場合、ビルオーナー側で内装をリニューアルしている場合が多く、使用感のない真新しいオフィスが期待できます。居抜きオフィス以上に借主側で工事を行う必要性が低く、入居にかかる費用はもっとも削減できるでしょう。
入居にかかる費用を抑え、なおかつ真新しいオフィスで働きたい。
そんな今までになかったニーズに応えられるのが、セットアップオフィスなのです。
セットアップオフィスのメリット
セットアップオフィスに移転する場合、具体的にどのようなメリットがあるのか、以下にまとめます。
メリット①移転にかかる費用が削減できる
前項で述べた通り、セットアップオフィスではビルオーナー側で前もってレイアウト設計を行い、入居できる状態を作ったうえで引き渡されます。通常のオフィス移転では入居工事に高額な費用がかかるところを、場合によっては丸々削減することが可能です。
また、退去時にかかる原状回復の費用も削減できる場合があります。テナント側としては、入退去にかかる費用負担をさほど考えずに済むため、急な移転をしなければならない場合でも、比較的対応しやすいでしょう。
メリット②入居までの時間を短縮できる
通常のオフィス移転では、レイアウト設計や工事の日程調整など、煩雑な業務をテナント側で行わなければなりません。これにはかなりの時間と労力を要すため、余裕をもったスケジュールを立てておく必要があります。
しかしセットアップオフィスであれば、前もってレイアウトが決まっており、什器、備品などオフィスに必要なものはすべて揃っているので、テナント側で行う業務が減り、入居までの時間を短縮できます。
そのため、通用の移転よりもタイトばスケジュールを組むことが可能です。
メリット③真新しいオフィスに入居できる
前項でも述べましたが、セットアップオフィスはビルオーナー側で室内をリニューアルするため、使用感のない真新しいオフィスに入居できます。また、テナントの専用室のみでなく、共用部もリニューアルされていることもあり、物件によっては新築ビルのような環境が備わっていることもあります。
オフィス環境が整っていれば、仕事の効率アップや、従業員のモチベーションアップにも繋がりますので、企業にとって大きなメリットになるでしょう。
セットアップオフィスのデメリット
次に、セットアップオフィスに移転する場合のデメリットを説明します。
デメリット①賃料が高くなる
セットアップオフィスの最大のデメリットといって良いのが、賃料が割高になる点です。
ビルオーナー側は、自らレイアウト設計を行い、設備のリニューアルなども行ったうえで引き渡しますので、初期投資が多くかかります。そのため、初期投資で負担した分を、毎月の賃料でまかなわなければならず、相場より高い賃料設定をすることが多いです。
基本的に賃料は毎月固定ですので、テナントとしては長く入居すればするほど、高額な賃料を払い続けることになります。移転の際のイニシャルコストは少なく済みますが、ランニングコストが高くつくことを踏まえたうえで検討することをおすすめします。
デメリット②自由なレイアウト設計ができない
レイアウトに関しては、ビルオーナー側で設計し、工事完了した状態で引き渡されますので、テナント側で自由に変えることはできません。もちろん、什器の入れ替えや間仕切りの変更など、ある程度の変更は可能ですが、かなり限られてしまうでしょう。
また、レイアウト変更を行った場合、退去時には原状回復が必要となります。すると、その分の費用もかかってしまうため、入退去時の費用を削減できるセットアップオフィスのメリットが薄れてしまいます。
オフィスのレイアウトに独自のカラーを取り入れたいと、強く考えている企業には向かない方法であることを覚えておきましょう。
デメリット③物件数が限られている
セットアップオフィスの人気は着実に高まってきていますが、通常のオフィスと比較するとまだ少なく、限られた物件数の中で選んでいくことになるでしょう。オフィスの立地や室内の面積などにこだわると、希望通りの物件が見つからない可能性もあり、ある程度の妥協が必要になるかもしれません。また、人気の高いエリアのセットアップオフィスは、すぐに契約済みとなってしまう場合も多いです。
セットアップオフィスを検討する企業は、早いうちに物件探しに着手し、積極的に情報収集していく必要があります。
セットアップオフィスの特徴をしっかりと把握しよう
以上がセットアップオフィスの解説です。
セットアップオフィスの特徴を要約すると、イニシャルコストが低い反面、ランニングコストが高くつくオフィスと捉えて良いでしょう。
そのため、長期間借りるのではなく、初期投資を抑え、さらに短期間での移転を検討している企業などに向いています。
オフィスの移転は、企業にとって大きな決断です。
セットアップオフィスの特徴をしっかりと把握し、自社の従業員の働き方や経営方針に向いているかどうか、よく考えたうえで計画しましょう。