居抜き

居抜きオフィス入退去時のコスト削減の現状は?減額できるもの・できないものをご紹介

これまでのオフィスはテナントごとに空間を一からつくりあげることが一般的でしたが、昨今では前のテナントから内装や什器を引き継ぐ「居抜きオフィス」に注目が集まっています。コロナ禍でこれまでの働き方が一変し今後オフィスがどのような空間になっていくか不透明な中、多くの企業が費用を抑えながら入退去できる居抜きオフィスを検討しています。

この記事では、居抜きオフィスの入退去時において、具体的にどのような費用を減額できるのか解説していきます。

◯居抜きオフィス入居時のコスト削減

通常の賃貸オフィスは何もない状態で引き渡されるため、入居時には間仕切り壁や電源、照明などを設置する工事や什器、備品の搬入など大掛かりな移転作業が発生します。

一方、居抜きオフィスは前に入居していたテナントの内装や什器、家具、備品などを引き継いで入居できる仕組みです。大幅な費用削減が期待できますが、たとえ居抜きオフィスでも減額できないコストは存在します。

ここでは居抜きオフィスの入居時に減額できるコスト・できないコストについて説明します。

■居抜きオフィス入居で減額できるコスト

内装工事費用(効果大)

通常は執務室、会議室、応接室など用途に応じてスペースを分けるために、間仕切り壁を新設します。それぞれのスペースに空調・電気・防災など各種設備も整えなければなりません。洗練されたオフィス空間を演出するために仕上げにこだわる場合は、さらにコストが上乗せされるでしょう。

規模や仕様によって前後するものの、内装を一からつくる場合の工事費用は1坪あたり20~40万円程度といわれています。居抜きオフィスで既存の内装を全て引き継ぐ場合はこれらの費用をゼロにできるため、コスト削減効果は絶大です。

什器・備品の調達費(効果中)

前のテナントがオフィスに設置する什器・備品を残していけば、それらの調達費用も削減できる場合があります。特に会議室や応接室の什器は、部屋の面積に合わせて設置しているため前のテナントが残していく可能性が高いです。執務室の什器や備品も前のテナント次第で引き継げる場合もあります。

ただし業種や業態、ワークスタイルが全く異なるテナントが入居していた居抜きオフィスでは、引き継いだ什器や備品を全く活用できない恐れもあります。

設計費用や引越し費用などの労働対価(効果中)

内装工事が発生する場合は、その内容に応じて設計費用もかかります。また搬入する什器・備品の量に応じて引越費用も支払わなければなりません。既存のオフィスを最大限活用すれば、これらの労働対価を減らせるでしょう。

移転プロジェクト期間・工数(効果大)

居抜きオフィスは移転プロジェクト期間を大幅に短縮できます。通常は入居できるまでに1~2ヶ月はかかりますが、居抜きオフィスは最短即日での入居が可能。期間短縮により内装工事や引越の作業工数も削減できます

■居抜きオフィス入居でも発生するコスト

家賃

月々の家賃はテナントとビルオーナーの間で締結した賃貸借契約の条件に基づき支払います。

保証金

保証金は家賃滞納や建物汚損など損害が発生した時に備えてビルオーナーがテナントから預かるお金です。前のテナントが預けた保証金はビルオーナーから返還されるため、新しいテナントが改めて保証金を預けなければなりません。オフィスの保証金は家賃の6ヶ月~12ヶ月分の金額が相場です。

仲介手数料

仲介手数料は物件を紹介してくれた不動産会社に対して成功報酬として支払う費用で、相場は家賃の1ヶ月分です。こちらも前のテナントから引き継げるものではありません。

光熱水費・回線利用料

光熱水費や電話・LANの回線利用料はサービスの利用量に応じて毎月請求される費用です。サービスを利用した本人が支払うことが基本ですので、居抜きオフィスでも変わらず発生します。

ネットワーク工事費用

電話・LAN回線は前のテナントに撤去されているケースがほとんどです。新たに配線工事と通信会社との契約を行わなければなりません。

複合機費用

複合機など高額なOA機器を購入するテナントは少数です。多くのテナントは月額料金を支払って利用するリース契約を結んでいます。必要に応じてリース会社と契約を結び直す必要があるでしょう。

新規什器購入費用

それぞれのテナントによってワークスタイルは異なり、必要な什器も変わってきます。業務を進める上で足りない什器は自らの負担で買い足す必要があります。

サイン工事費用

企業ロゴなどのサインはテナント独自のデザインであるため、新たに準備しなければなりません。

補修・清掃費用

前のテナントが退去する際に清掃されているはずですが、入居時にはまた汚れてしまっている可能性があります。

引越し費用             

重要書類など少なからず前のオフィスから搬入しなければならない荷物はあるはずです。居抜きオフィスだからといって完全に引越予算を削らないように注意しましょう。

■居抜きオフィス入居でも場合によっては発生するコスト

電源工事

レイアウトを変える場合や消費電力が大きい機械を設置する場合などは、電源工事が必要です。

照明工事

レイアウト変更はもちろん、使用する照明器具を変更する際も照明工事が発生します。特に昨今ではランニングコスト削減の目的で蛍光灯や白熱灯からLED照明に変更するテナントが増えています。

間仕切り工事

必要な個室数が確保できていない場合は追加で間仕切り壁を新設しなければなりません。

仕上げ工事

既存のデザインから一新したい場合は追加工事が発生します。

家具工事

収容人数に増減がある場合などは、家具の追加費用や廃棄費用がかかります。

AV工事

会議室の映像や音響をグレードアップしたい場合などはAV工事が必要になります。

◯居抜きオフィス退去時のコスト削減

居抜きで退去するためにはビルオーナーからの承認が必要です。多くのビルオーナーは「退去後の後継テナントを見つけること」を承認の条件としています。後継テナントがいなければ基本的に居抜き退去は認められず、通常の原状回復工事を実施しなければなりません。ここではオーナーから居抜き退去が認められた場合、どの程度コスト削減効果があるのか検証します。

■居抜きオフィス退去で減額できるコスト

原状回復費用(効果特大)

原状回復工事の中で大きな割合を占めるのが内装工事です。居抜き退去では内装工事を省略できるため、大幅なコストダウンにつながります。

什器廃棄費用(効果中)

後継テナントとの調整次第ですが、什器を再利用できる場合は廃棄費用を減らせます。

残存家賃(効果大)

定期借家契約では基本的に中途解約は認められていませんが、ビルオーナーと合意できれば契約期間中であっても解約が可能です。ビルオーナーとの協議次第では、合意解約日から契約満了日までの家賃を支払わずに済む場合もあります。

■居抜きオフィス退去でも発生するコスト

サイン撤去費用

万が一企業ロゴなどを悪用されるリスクを防ぐため、サインは忘れずに撤去しましょう。

清掃費用

ビルオーナーとの取り決めによっては、居抜き退去であっても清掃費用が必要な場合があります。

引越し費用

入居時同様、重要書類など持ち出さなければならない荷物は必ずあるはずです。

回線撤去費用

電話回線やLAN回線は撤去することがほとんどです。

廃棄費用

後継テナントが使わない什器や備品は、自らの費用で廃棄しなければなりません。

次期オフィスの入居費用

当然、次のオフィスに入居するための費用がかかってきます。

まとめ

居抜きオフィスは入退去時のコストを抑えられるため、短期間で社員数が増える成長企業やコロナ禍でオフィスの在り方を見直す企業を中心に選ばれています。一口に居抜きオフィスといっても、デザインや機能は千差万別。せっかく居抜きオフィスに入居しても、既存の空間を活用できなければ意味がありません。最適な居抜きオフィスを探すためにはWEBなどを使ったリサーチに加え、不動産仲介会社を利用するのもおすすめです。それぞれのワークスタイルに合った居抜きオフィスを選択することが、コストを最大限圧縮できる近道といえるでしょう。