居抜き

居抜きオフィス退去時の原状回復費削減5つのポイント

企業が賃貸オフィスビルにテナントとして入居する際、原状回復工事が完了した状態で入居する場合と、前のテナントが使用していた内装や什器などが残された状態、すなわち「居抜き」状態で入居する場合があります。

居抜きはテナント退去時の原状回復費、および次のテナントの入居工事費が抑えられるため、コストを抑えたい貸主および借主にとってメリットのある方法です。

ただし、居抜きで入居したテナントがオフィスを退去するときは、原状回復して退去しなければならない場合があります。

原状回復工事を行う場合、施工業者の見積もりが高額になりがちです。
提示された見積もりを見て、想像以上の金額に驚いてしまう人も少なくないでしょう。

しかし1つの見積もりを見て、金額をそのまま受け入れる必要はありません。
工事費を削減するポイントをいくつか知っておけば、見積もり金額も大きく変わります。

そこで本記事では、主に居抜きオフィスから退去予定の企業様へ向け、原状回復費削減のための5つのポイントを紹介します。

オフィスの原状回復とは

オフィスの原状回復とは、賃貸オフィスビルに入居したテナントが、賃貸借契約締結前の状態に戻すことをいいます。
要するに借主側で造作したものをすべて撤去して元の状態に戻すという意味です。

しかし居抜きで入居したテナントがオフィスを退去する場合は、居抜きの状態を次の入居者に引き渡すか、あるいは原状回復して退去するか、2つのパターンがあります。

賃貸借契約書の内容などによって、どちらになるかが決定されますが、前述しました通り原状回復を行う場合、工事費が高額になるケースが多いです。

では、なぜ原状回復の工事費は高額になるのでしょうか?
次の項で具体的に説明していきます。

原状回復費が高くなる理由

オフィスの原状回復費が高くなる理由を以下にまとめます。

理由①法的な基準がなく、賃貸借契約書の記載内容が曖昧な場合が多い

民法上では借主に原状回復義務が生じることが規定されていますが、具体的に何をどこまで戻さなければならないという細かい基準はありません。
そのため、原状回復工事を行う際は賃貸借契約書に記載されている事項、あるいは付随する書面(「原状回復工事要項」など)に基づいて工事内容を決めていきます。

しかし、特に古い賃貸借契約書などには原状回復の内容や、貸主借主それぞれの責任区分が曖昧に書かれていることが多く、本来借主側の責任でない部分までもが原状回復内容に盛り込まれ、大きな負担となってしまう場合があります。

通常の賃貸物件であれば、借主側がいくつもの造作を行うことは少なく、こういった事例は起こりにくいのですが、オフィスの場合は内装などに色々と手を加えることが多く、原状回復の区分によって退去時の負担が大きく変わってきます。

理由②物件のグレードアップ工事を退去時の原状回復費にのせるオーナーがいる

オーナー側がビルの資産価値向上や次のテナント誘致のために行うグレードアップ工事を、原状回復費に上乗せする場合があります。

たとえば照明器具のLED化、古くなったトイレや給湯設備のリニューアルなど、当初存在していたものよりハイグレードな状態に変更する内容を、原状回復内容に盛り込んでいるケースがあります。

これは借主側が負担すべき内容ではありませんので、もし負担を強いられた場合は、工事内容を見直すようオーナー側と交渉しましょう。

理由③テナント企業が工事見積もりを査定できない場合が多い

原状回復工事は、基本的に大部分をオーナー側の指定業者が行います。
指定業者は主にビルの管理会社などですが、提示された工事見積もりをテナント企業が査定できず、そのまま受け入れてしまうケースがあります。

こういった工事の場合、見積もりを提示する施工業者から、いくつもの下請け会社へ工事を振り分けるのが通常です。
間に入る会社の数によっても費用が大きく変わりますので、相場とかけ離れた金額を提示されることも珍しくありません。

原状回復費削減5つのポイント

前項で原状回復費用が高くなる理由を述べましたが、次に費用を削減するポイントを具体的に見ていきます。

ポイント①契約前:原状回復範囲を交渉しよう

原状回復の範囲、責任区分を明確にするため、賃貸借契約書の内容をよく読み込んだうえで、オーナー側と交渉しましょう。

契約書を締結した後では、どうしても貸主側の立場が強くなりがちなので、契約前の段階で納得いくまで話し合うことが重要です。

なお、賃貸借契約書に付随して原状回復工事要項、工事区分表などの書面が用意されているケースもありますので、そちらもよく読み込んでおきましょう。

また交流にある不動産会社など、知識のある人の意見を事前に聞いたうえで交渉するのもおすすめです。

ポイント②入居後:すぐにオーナー立ち会いで原状回復の範囲と内容を決めてしまおう

実際に入居した後、オーナー立ち会いの元で原状回復の範囲と内容を確定しておきましょう。
(「立ち会い」とは実際に当人に現地を見てもらうことをいいます)

立ち会いが必要なタイミングとしては、入居前の室内の状態確認、退去時の原状回復工事見積もり受領前、原状回復完了後の引き渡し確認などがあります。

ビルオーナーの代理で管理会社などが立ち会う場合も多くありますが、いずれにしてもできるだけ打ち合わせの機会を増やして、詳しく決めていくことが大切です。

ポイント③入居中:追加で工事する場合もしっかり管理会社、オーナーさんに説明しよう。運用的にも管理的にもキレイに使おう。

入居後に追加で工事を行い、テナント側で造作する場合などは、しっかりと管理会社またはオーナーへ説明しましょう。

工事の内容によっては、ビルの性質上認められないケースもありますし、原状回復の際はどのようにするべきかを、工事するタイミングで明確にしておけば、後になって問題になることもありません。

もし引き続き次のテナントが使用できるものであれば、撤去しなくて良いと認められる場合もあり、そうなれば原状回復費の削減にも繋がります。

ポイント④退去検討中:オーナーさんに居抜きの許可をもらって、居抜き入居企業をを見つけよう!

退去した後、次に居抜きの状態で入居できる企業を自ら見つけたうえで、オーナーの許可がもらえれば、原状回復を行わずに引き渡しできる場合もあります。

しかし、そのためには次の入居者を探さなければなりませんので、探し方や引き継ぐ方法などを知っておく必要があります。

不動産会社に相談する方法もありますが、最近ではマッチングサービスを活用する方法が人気です。
マッチングサービスではサイトに登録しておけば、不動産会社から条件に合うテナントを紹介してもらえます。

オンライン上でやり取りが可能なため、効率的に次のテナントを探すことが可能です。

ポイント⑤退去決定後:管理会社から原状回復の見積もりをもらって後、原状回復費用削減コンサルを活用しよう!

退去が決定した後、オーナー指定業者(ビルの管理会社など)から原状回復工事の見積もりを取得しましょう。

見積もり内容はしっかりと精査する必要がありますが、専門知識のある人でなければ、適切な金額であるかどうか判断することは難しいです。

その場合は、工事費の査定を行う専門のコンサル会社がありますので、高額な見積もりに疑問が生じたときなどは依頼をおすすめします。

コンサル会社は見積もり内容を細かく見て、市場価格との相違点などチェックしてくれます。
オーナー側と金額交渉するうえでの根拠として利用できますので、専門知識がない場合は利用を検討してみてください。

原状回復費は事前に確認すべきポイントを把握しておくことが重要

以上が原状回復費削減のポイントです。
スケジュールがタイトで時間がない場合や、退去する企業側の知識が不足している場合など、相場とかけはなれた高額な費用を受け入れてしまうケースも多々あります。

重要なのは、借主側が原状回復について事前に勉強し、確認すべきポイントを把握しておくことです。

工事を発注してしまってからでは金額を変更することはできませんので、後悔することのないよう、是非、上にあげたポイントをしっかりと踏まえたうえで臨むことをおすすめします。