30人規模のスタートアップ・ベンチャー企業において、オフィスを選ぶ際にはいくつかのポイントがあります。
広さや予算以外にもロケーション、社員へのベネフィットなど自社のブランディングやエンゲージメントに対する配慮が必要です。
さらには業務の生産性やセキュリティ、将来の増員も念頭に置いてレイアウトを考える必要もあります。
この記事では30人規模のオフィスを検討されている社長様や担当者様に向けて、最適な広さやレイアウト、おすすめのポイントを紹介していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、オフィス選びにお役立て下さい。
30人規模オフィスの広さの目安
オフィスの広さを決めるには、一人当たりの面積(坪数)と賃料を基準にします。
面積が広すぎても狭すぎても業務に支障が出ます。賃料も管理費の中で大きな割合を占めるコストになるので、企業の財政規模に適した金額にする必要があります。
それぞれの目安について解説していきます。
一人当たりの面積の目安
オフィスを選ぶときの1人あたりの面積は3坪が目安といわれています。
しかし、法令で定められた基準(約1.4坪)をクリアしていれば、必ずこうしなければならないという制限はありません。ビジネスモデルや事業フェーズによって変化します。
一般的に、不動産会社の指標としては、一人当たりの推奨面積を2〜4坪としており、30人の企業であれば60坪〜120坪を推奨することになりますが、実際には30人でも50坪程度で営業している事例もあります。これは仕事の内容によっても変わってきます。
来訪者の多い業種や製造業では社員の執務スペース以外に会議室や応接室を複数設置することも必要になります。
自社のビジネススタイルに応じてレイアウトを考えながら広さを決めていきましょう。
賃料の目安と都内の相場
一般的に賃料は会計処理上で、売上総利益(粗利益)の10%〜20%の範囲に収めることが適正といわれています。この算式を基に自社が負担できる賃料を決めていきます。
参考に、東京都内の賃料(坪単価)をエリア別でみてみましょう。
やはり大企業の本社や中央省庁が集まる丸の内エリアが最も高く、坪単価は3万〜4万円台となっています。
また近年、スタートアップやベンチャー企業が集まり「五反田バレー」と言われる五反田も、新築の竣工が続き価格も上昇してきています。目安は坪単価約2.8万円となっています。
その他オフィスとして人気のエリアについては以下にまとめました。
賃料は同じエリア内にあっても駅からの距離やビルの築年数などによっても変わってきますので、おおよその目安として参考にしてください。
エリア | 賃料(坪単価) | 特徴 |
渋谷 | 3.0万円 | コロナ前までは3万超が普通だったが、値下がり傾向 |
虎ノ門・神谷町 | 3.1万円 | 虎ノ門ヒルズが出来てから、開発著しいエリア。今後も街の価値は上がる傾向 |
神田・秋葉原 | 2.3万円 | 神田・秋葉原は2万円超だが、間にある岩本町は2万を切り狙い目 |
新宿・西新宿 | 2.7万円 | 人気エリアでやや高め。但し中心部を離れると中小オフィスがありおすすめ |
お台場・有明 | 1.6万円 | 再開発が進み今後はオフィス街として発展が見込まれるエリア |
門前仲町 | 1.9万円 | 外国人にも人気の観光エリアだが、東京駅からも近く、穴場の一つ |
傾向として中心地から離れるほど賃料は下がってきます。自社のビジネスに見合ったエリアと費用の観点から選びましょう。
30人規模オフィスの選び方のポイント
一般的な30人規模のオフィスを選ぶ際には、広さ、賃料、立地条件以外にも「室内の快適さ」、「セキュリティやインフラ等の設備」、「将来起こりうる拡充」にも目を向けることが大切です。
そのポイントについて解説していきます。
お手洗いは男女別がマスト
お手洗いは精神的なリフレッシュの場でもあります。特に女性社員への配慮が不可欠です。
30人規模のオフィスになれば男女別は必須要件です。パウダールームとしての役割も果たすといった女性特有のニーズにも対応する設備があることなど、清潔で快適なお手洗いが設置されていることが望まれます。
できれば1フロア1テナント
リスク管理、レイアウトの自由度から、可能であれば1フロア1テナントをおすすめします。
自社の社員や来客者以外がフロアに出入りすることがなくなり、セキュリティが強化できます。また、エレベーターを降りてすぐに専有部分となり、エントランスを企業イメージに沿って作ることができます。そうすると、訪れた人に対し、企業イメージの向上にも繋がったり、社内のインナーブランディングにも繋がるでしょう。
このように独立性が保たれることで、ほかの会社の雰囲気に影響されず、仕事に集中できる環境が作れます。
24時間、土日も使える物件
賃貸オフィスの中には早朝や深夜の入館制限、土日や祝祭日、年末年始は閉館するなど利用を制限している場合があります。
平日の日中だけで仕事が完結するのであれば問題ありませんが、特にスタートアップ企業では時間帯や曜日に関係なく、想定していない突発的な対応を求められることもあるでしょう。また業務によっては周囲に人がいない時間帯で仕事をした方が効率が良い場合もあります。
仕事の特性や生産性によっては、24時間、土日も使える物件を選んだ方がよいでしょう。
増席の可能性も視野に入れて選ぶ
今後の事業拡大や社員の増員を計画しているのであれば、増席のことも考えてオフィスを選びましょう。特にベンチャー・スタートアップ企業では計画よりも早いペースで事業が拡大することもあり得ます。
業務を円滑に進めるためにも余裕を持ったオフィス選びをしましょう。
喫煙場所を確認しておく
喫煙者、非喫煙者双方のためにもビル内やビル周囲で喫煙可能な場所を確認しておきましょう。
ゴミの出し方を事前に確認
事業系廃棄物の処理方法についても、ビル管理会社やオーナーへ以下の点を確認しておくことが必要です。
- 集積場所
- 排出日
- 分別方法
- 管理費
他のテナントや地域とのトラブルを防ぐためにもルールを確認します。
駅からの距離は妥協することも必要
通勤で駅からオフィスまでの距離は社員にとって重要事項です。
賃料は駅から近い方が高くなる傾向にありますが、ベンチャー・スタートアップ企業は、まずはオフィスの広さや設備を整える、賃料などの経費を抑えるといった、業務の効率を優先し、駅からの距離は妥協することも必要です。
30人規模で働きやすいオフィスにするためのポイント
社員がストレスを感じずに高いパフォーマンスを発揮できる「働きやすいオフィス」を実現するには、ワークスペース以外での環境の整備も必要です。
主なポイントについて解説します。
エントランスはあるに越したことはない
エントランスは会社の顔とも言われます。訪れたお客様を出迎えるスペースでもあり、自社のイメージを伝えるスペースでもあります。
また、自社内でのインナーブランディングにも影響します。賃貸物件ですとスペースは限られますが、パーテーションや造作壁などで執務スペースとエントランスを区切り、受付を呼び出す手段を設けるなどの方法があります。
豪華である必要はないので、セキュリティ対策も含めて様々な工夫をしながらエントランスの設置を検討するとよいでしょう。
個人の荷物保管場所を設けるとよい
作業性の向上とスペースの有効活用のために、個人の荷物を保管する場所も検討しましょう。
仕事道具や書類、鞄などの保管場所や、コートやジャケットなどの上着、傘などの保管のための用途に応じたロッカーがあるとよいでしょう。
フリーアドレス? 固定席?
30人規模ではフリーアドレスではなく固定席がおすすめです。
社員数が増えてくるとフリーアドレス化を考えるようになります。フリーアドレス化には従業員同士のコミュニケーションの促進やスペースの有効活用ができるなどのメリットがある一方で、座席を探すストレスがあったり、書類や持ち物の管理が面倒になったりと従業員の負担が増えるデメリットもあります。
また、固定席からフリーアドレス化をするには、フリーアドレス化に必要な機器類の購入、ペーパーレス化の推進などのコストがかかります。
30人規模ですとまだメリットの方が薄いといえます。導入を検討するには社員数で50人以上、面積で100坪以上が目安となります。
1人1台、サブモニターを準備
業務の効率化に向けて、サブモニターの活用を考えましょう。
近年のリモートワーク・テレワークの推進によって持ち運びのしやすいノートパソコンでの仕事が一般的になりましたが、大きな画面で作業したほうが効率のいい場合があります。また、サブモニターは作業だけでなく、ミーティングの場においても画面共有しやすいなどのメリットがあります。
オフィスおかんやオフィスグリコなどの福利厚生
福利厚生の一環として「置き型社食」や「置き菓子」を導入する企業が増えています。社員にとって「外出の手間が省ける」「リフレッシュできる」といったメリットがあります。また仕事以外でのコミュニケーションツールにもなります。従業員満足度(ES)向上のためにもぜひ導入を検討してみてください。
自動販売機の設置
仕事の合間や休憩時間にリフレッシュすることはその後のモチベーションアップにつながります。オフィス内に自販機があれば24時間いつでも使えて外出の必要もありません。また災害時の備蓄にもつながるなど防災の一環として有効です。
社長室? 社長席?
限られたオフィススペースの有効活用の点からしても、個室の「社長室」を設けるメリットは少ないです。「社長室」を設けると社員との関係が希薄になったり、情報伝達に遅れが出るなどのデメリットが多くなります。反対に社員との距離が近すぎてもプレッシャーを与えたり、社長自身の業務に支障が出たりすることもあります。
社長と社員は適切な距離を保つことが重要なので、「社長席」を作ることがおすすめです。
グリーンの導入
オフィスにグリーンを置くことでストレスの軽減や作業効率、創造性を向上させる効果があるといわれています。スペースに支障のない範囲で観葉植物を置くことをおすすめします。費用に関しては大きさや種類によって異なりますが、1つ数千円から数万円と様々です。まずは予算10万円程度を目途に数点置いてみてることから始めてみましょう。
30人規模のオフィスのレイアウトサンプル
60坪のオフィス
60坪のオフィスのサンプルレイアウトです。
これくらいの広さになるとカフェスペースやファミレスブースなどを設けられるようになります。
90坪のオフィス
90坪のオフィスのサンプルレイアウトです。
会議室を複数設けることができたり、ソファースペース、バックヤードなども充実させることができます。
まとめるとポイントは3点
オフィス選びは、広さ・ロケーション・コスト・設備といった基本条件以外にもいくつかのポイントがあります。
30人規模になると、仕事の進め方や社員との関わり方も少人数の場合とは変わってくるので、30人規模の運営に見合ったオフィス選びが求められます。
ポイントをまとめると以下の3点になります。
1.自社のビジネスモデルに合ったイメージづくり
2.会社に対するエンゲージメントを高める環境
3.高いパフォーマンスを実現する施策
この記事を参考にしていただき、ご担当社さまの企業にとってより良いオフィスづくりが実現することを祈っています。