オフィスづくり

居抜きオフィスならではのレイアウトを考えるときのポイントとは?

前の入居者が使用していた内装や什器などを残す「居抜きオフィス」。内装工事や家具を揃える等の初期費用を抑える事ができるメリットもあり、コロナ禍の現在多くの企業が居抜きオフィスで新たなスタートを踏み出しています。

初期費用を抑える事ができる大きなメリットがある一方、前の会社と全く同じレイアウトが自分たちにとっても仕事のしやすいレイアウトとは限りません。営業が多い会社とプログラマーが多い会社では使いやすいレイアウトも変わるものです。

この記事では、居抜きという以前からの引き継ぎがあるオフィスならではの、レイアウトを考えるときのポイントや気をつけることを解説します。

居抜きオフィスの現況把握

まずは、居抜きオフィスの現在の状況を把握しましょう。

把握するものは主に3つです。

  1. 現在のレイアウト
  2. 何が残されるのか
  3. 照明やコンセントなど設備の位置

では、順番に確認していきましょう。

①現在のレイアウト

居抜きオフィスは、例えるなら手作りのアクセサリーです。一つひとつ形が違うので、よく見て現在のレイアウト状況をなるべく把握することが大切です。

退去する会社のレイアウト図面がもらえたら必ずもらいましょう。壁の位置、デスクのサイズなど図面には多くの情報が載っていますし、自分たちのオフィスを作る際のレイアウトの参考になります。また、見学した際の写真と図面を見比べると、どこがどうなっていたのか把握しやすくなります。

レイアウト図面がもらえなかった場合は、不動産屋さんからもらえる図面に壁・ドア・窓の位置や高さを書き込みましょう。次の項目でも触れますが、居抜きの場合は会議室などの個室がそのまま残るケースが多いので、壁の位置を把握することは大切です。

②何が残されるのか

居抜き物件の場合、退去する会社が何をどこまで置いていくのかを確認することが大切です。この置いていく物を業界用語では”残置(ざんち)”と言います。

居抜きではないオフィスに入居する会社は、何もないスペースに内装工事を行って床・壁・天井を自分たちの会社に合わせて作り、家具をレイアウトしてオフィスとして完成させます。

“居抜き”と一口に言っても、オフィスの中の内装工事の部分(床・壁・天井)だけを残置する場合、内装にプラスして家具の一部を残置する場合、全て残置する場合、と退去する会社によって様々です。

何が残されるのか。ここを確認することが、自分たちのオフィスレイアウトへの第一歩となります。

③照明やコンセントなど設備の位置

こちらは後からの確認でも間に合うことなのですが、照明・エアコン・コンセントなど設備の位置もなるべく早めに把握しておいた方が良いものです。会議室を増やしたい場合などに天井設備(照明やエアコン)のある場所に壁を作ると設備を移設するお金がかかるので、そこを避けてレイアウトを考えると予算が抑えられます。

自社の現況把握と未来予測

居抜きオフィスの現在の状況を把握できたら、次は自社の現在の状況の把握と未来予測をしましょう。

把握するものは主に3つです。

  1. 現在の社員数と在席率
  2. 1年後の社員数
  3. 収納量

では、順番に確認していきましょう。

①現在の社員数と在席率

現在の社員数が何人かは簡単に把握できると思います。では、その社員が業務時間のうち何時間のあいだ自分の席にいるかという在席率はご存知でしょうか?

例えば、営業社員のように外回り・会議と自分の席にいる時間がとても短い人もいますし、事務を行う社員のように会社にいる間はずっと自分の席にいる人もいます。コロナ禍ではリモートワークができる職種の人はほとんど出社しない、という人までいるのではないでしょうか?そのように在籍率の低い職種の社員には、一つの席を複数の人で共有するフリーアドレスにするという手もあります。

※在席率とは任意の時間・時間帯について、在籍するワーカー数に対する自席で業務を行っているワーカーの割合。 執務室の利用状況把握に用いられる。(オカムラ用語集より)

②1年後の社員数

次に、自社の成長率を考えて、1年後の社員数を予想しましょう。

居抜きでオフィスを探す会社は、スタートアップなど採用を積極的に行っているスピード感ある会社が多く見られます。現在の社員数と1年後の社員数を比較して、あらかじめ席を増やす前提でレイアウトすることがコツとなります。

③収納量

最後に、自社の収納量も把握しましょう。

物販などサンプルや販促品といった社内に置く物の多い会社もあれば、アプリ開発など現物を置くスペースがほとんど必要ない会社もあります。都心は不動産の賃料が高いので、社内に置く物は少ない方が良いのはもちろんですが、社内に置かなくては立ち行かないものもあるのでよく検討しましょう。レンタル倉庫や書類のPDF化などを利用するのも一つの手です。

また、フリーアドレスにした場合は個人ロッカーを置く必要があるので、その量も把握しておきましょう。

レイアウトを行う

さて、いよいよレイアウトです。

ここまで居抜きオフィスと自社の現況を把握し、自分たちの目指すオフィスの条件が見えてきたところだと思います。基本的なオフィスレイアウトの方法はリンク先の記事を見ていただきたいのですが、ここでは居抜きならではのポイントを説明します。

  1. 間仕切り壁について
  2. デスクレイアウトについて
  3. 床について

では、順番に確認していきましょう。

①間仕切り壁について

退去する会社が作った会議室などの部屋がそのまま利用できるか検討します。部屋を仕切る壁を間仕切り壁というのですが、この壁を作る工事をするとお金がかかるので、そのまま利用した方が予算を抑えられます。その場合、倉庫だった部屋を会議室にするなど部屋の役割だけを変更することも検討してください。

居抜きオフィスの現況把握の項目でも触れましたが、新しく壁を作る場合は天井設備(照明やエアコン)の位置に注意してください。天井設備のある場所に壁を作ると設備を移設するお金がかかります。退去した会社が天井設備の位置を変更している場合もあるので、図面が入手できたとしても実際のオフィスを見て確認したほうが無難です。

間仕切り壁がスチールパーテーションという、写真の様な壁だった場合は組み替えで部屋の大きさを変えることができる場合もあります。工事は専門業者に依頼することになりますが、新しく壁を作るよりは予算を抑えることができます。

https://office.uchida.co.jp/

②デスクレイアウトについて

居抜きオフィスにおいて、デスクレイアウトは一つのポイントとなってきます。

退去する会社が家具を残していった場合、使えるものは使い、足りないものは購入します。要注意なのは、残してはいかれたが、自分たちは使えない家具があった場合。これを廃棄する費用は自分たちで出すことになります。

OAフロアと言って床の下に配線が通るフロアの場合、退去した会社のレイアウトに合わせて床から電源が出ているので、その位置を考慮しながらレイアウトすると電源の移設費用が抑えられます。

写真のようにデスクやコピー機などコンセントを必要とする物のあった場所に電源が残っています。そこに近い位置にデスクを置けば床からのコンセントの位置をずらす必要がなくなります。

このように、デスクレイアウトを調整するだけで余計な費用がかからないようにできるというわけです。

コンセント

③カーペットや壁紙の交換について

ぱっと見ただけでは気が付きにくいのが、床の汚れです。コピー機の周りやコーヒーサーバーの近くなどは特にカーペットや壁紙が汚れていることが多く、交換したほうが良い場所の一つと言えます。

また、退去した会社は倉庫に使っていた部屋を自社では会議室にしたいなど、用途を変えることがあります。その場合はカーペットや壁紙を変えないと、汚れ以外に雰囲気が合わないということもあります。

まとめ

前の入居者が使用していた内装や什器などを残す「居抜きオフィス」。居抜きオフィスならではのレイアウトを考えるときのポイントは、どれだけ以前の入居者のレイアウトを転用できるかという過去の活用と、1年後の自社の成長を想像した未来のレイアウトをできるかという事です。

自分たちだけでは考えられない、と感じた場合はオフィスデザイン専門の業者に頼むというのも良い手段でしょう。相談だけであれば通常は無料ですし、プロの知識やアイディアにより予算内で何ができるか親身に考えてくれる事がとても多いです。自社の状況を整理するためにも、相談する事も視野に入れてみてください。