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ビルの貸主と借主をつなげるオフィス検索サービス「SERECT」の魅力を徹底解剖!

不動産業界に携わって8年、現在は不動産系webライターをしているpocaringです。

私は不動産デベロッパー(開発業者)でオフィスビルの開発に従事してきました。その中でも特に難しさを感じていたのは、賃貸不動産の借主をオフィスビルに誘致する営業活動、「テナントリーシング」(以下、リーシング)でした。

オフィス移転を検討している企業にアプローチできればよいのですが、そう簡単にコミュニケーションをとることはできません。そもそも「〇〇株式会社がオフィス移転を考えている」という情報はどこを調べても出てきませんし、移転計画はオープンにしないことも多いのです。

そんな悩ましいリーシングを一気に効率化してくれるサービス「SERECT(セレクト)」が、2021年7月27日に登場しました。

今回は、ビルの貸主と借主をつなげるオフィス検索サービス「SERECT」の魅力を、専門家の立場から徹底解剖します!

テナント企業とビルオーナーをマッチング「SERECT」とは

一般的なオフィス不動産仲介の仕組み

ビルの貸主が単独で借主を見つけることは困難なので、借主は主に仲介会社に紹介してもらうのが一般的です。借主側も希望に合った物件があれば紹介してもらうよう、仲介会社へ依頼します。そして賃貸契約が成約した際は、仲介会社に仲介手数料を支払うというのがこれまでのスタンダードでした。

仲介のビジネススキームは、貸主と借主の間を1社で仲介する場合と、貸主側と借主側で異なる2社の仲介会社が入る場合の、主に2パターンです。

貸主から依頼を受けている仲介会社のことを元付け業者、借主から依頼を受けている仲介会社を客付け業者といいます。

不動産業界に残る情報の非対称性とは

今の時代、インターネットを使えば個人で様々な情報を調べることができますよね。しかし不動産の物件情報はまだまだ一般消費者に対してオープンではなく、仲介会社がほとんどの情報を握っているのが現状です。この仲介会社との間にある大きな情報格差のことを、情報の非対称性といいます。

新しいオフィス検索サービス「SERECT」とは

新しいオフィス検索サービス「SERECT」とは

このような一般消費者と仲介会社との間で発生している情報の非対称性を解消するのが、「SERECT」です。

「SERECT」は貸主と借主を直接つなげる仕組みで、仲介会社を挟む必要がありません。チャットを使って貸主と借主が直接コミュニケーションをとることができます。

貸主は借主の需要をつかみやすく、借主は貸主からの精度の高い物件情報を入手できるという相互にメリットのあるサービスです。既に複数のビルオーナーが導入を決めており、不動産業界で注目が集まっています。

SERECT

SERECTのメリット・デメリット

メリット

①貸主がリーシングにかかるコストを削減できる

「SERECT」を使えば仲介会社が入らないため、仲介手数料を支払う必要がなくなります。もともと仲介会社に頼らず自社でリーシングを行っていた貸主も、営業効率化による人件費・広告宣伝費の削減など、様々なコストメリットが期待できるでしょう。

②直接やりとりできるので検討の精度が高まる

オフィスのスペックや特徴を最も熟知しているのは、貸主です。仲介会社は物件に関する基本的な質問には回答できますが、詳細な質問に対しては貸主や管理会社への確認に時間を要する場合があります。

このように仲介を挟んだやりとりは一定のタイムラグが発生してしまいますが、「SERECT」ではそれを省けます。貸主に直接問い合わせることができれば、借主は無駄なく高精度の情報を取得できるでしょう。

③貸主が借主のニーズを知ることができる

借主がどんなオフィスに入居したいのかというニーズを簡単に調べられるのも「SERECT」の魅力です。貸主は物件と相性が良さそうな借主にターゲットを絞って、効率的にリーシングを展開できます。

具体的なニーズがわかれば人気が高いオフィスの傾向もつかみやすくなるため、新規のオフィス企画にも大いに役立つでしょう。

④借主が貸主からオファーを受けられる可能性がある

借主は「SERECT」に、希望条件や要望を記載することができます。貸主がこれを見て借主へ逆オファーできる機能もあるため、マッチングすれば借主は優良物件に好条件で入居できる可能性があります。

デメリット

仲介会社不在のため不利な条件で契約してしまう恐れがある

賃貸借契約の締結は、不動産の専門知識が必要です。そのため、不動産業者でないと不利な条件で契約してしまう恐れがあります。

仲介が入る場合は、仲介会社が契約締結のサポートまで行ってくれるのであまり心配はいりません。しかし「SERECT」の場合は仲介会社が入らないので、契約当事者が不動産業者でない場合は条件交渉などの場面で注意が必要です。

「SERECT」の導入効果が高いのはどんなケース?

仲介会社を使った現状のリーシングに手ごたえを感じられていない貸主ほど、「SERECT」の導入効果が期待できます。ここでは、導入効果が高いケースについてご紹介します。

貸主側から借主をオファーしたい

昨今では入居している借主によって、オフィスビルのイメージが決まるといっても過言ではありません。注目されている成長企業や先駆的企業を誘致したいと考える貸主は多いのではないでしょうか?

「SERECT」ではオフィスビルの仕様やコンセプトなどと親和性の高いテナントを見つけ、貸主からオファーすることが可能です。

仲介会社を挟まず、借主と直接コミュニケーションをとりたい

「仲介会社に依頼しているものの、なかなか借主が見つからない」「仲介会社経由だと借主の本音がわからない」と頭を悩ませている貸主は、借主と直接コミュニケーションをとった方が効率的です。「SERECT」を使えば借主と直にやりとりができるので、必要に応じて募集条件の方針転換が図れるでしょう。

借主がどんなオフィスを求めているのか知りたい

オフィスは注文住宅と異なり、借主のニーズを聞きながらつくるのは困難です。しかし「SERECT」のマーケティング機能を使えば、借主がどんなオフィスを求めているのか、つまりはどのようなニーズを抱えているかを知ることができます。新築オフィスの開発や中古オフィスのリニューアル計画などに活かせるはずです。

SERECTが浸透すると不動産業界はどう変わっていくか?

「SERECT」の浸透により需要が高まるサービスと仲介会社の生き残り戦略

賃貸借契約締結する際は、不動産や法律の専門知識が欠かせません。そのため契約締結のサポート業務(条件交渉、契約書の文言調整など)は、「SERECT」が浸透した後も需要が継続するでしょう。特に不動産業者ではない借主の場合、安全な取引を行うためにもプロの力を借りたいと考えるのではないでしょうか。

これまでの仲介会社は物件紹介業に重きを置く傾向が強かったですが、今後は物件紹介業から契約締結サポート業へシフトしていく可能性があります。それに伴い仲介会社の生き残り戦略も、「いかに多くの物件・テナント情報を紹介できるか」から「いかに良い条件で契約締結できるか」に変化していきそうです。

プロオーナー(デベロッパー)とアマチュアオーナー(地主)それぞれの影響

プロオーナー(デベロッパー)はもともと不動産の知識や経験が豊富なので、仲介会社に頼っていたのは物件紹介業がメインでした。そのため物件紹介機能を仲介会社から「SERECT」にシフトしていくことで、プロオーナー(デベロッパー)はコストや時間を大幅に削ることができるでしょう。

一方で多くのアマチュアオーナー(地主)は、物件紹介業だけでなく契約締結サポート業も仲介会社に頼っていました。したがって「SERECT」の導入だけでは契約締結の際に不安が残るため、別途仲介会社にサポート業務を依頼するケースが想定されます。

「SERECT」がオフィス空間に与える影響

「SERECT」の浸透によってオフィス空間は画一的な空間から、テナントのニーズを反映した多様な空間へ変化する可能性があります。

これまでのオフィスはあらゆるテナントに対応できるよう汎用性の高さが重視され、OAフロアにタイルカーペットが敷き詰められた無機質で画一的な空間が一般的でした。しかし今後「SERECT」のようなサービスが浸透すれば借主が貸主に具体的なニーズを伝える機会が増えるので、借主の働き方や好みに応じた多様なオフィス空間に進化していくのではないでしょうか。

まとめ

新たなオフィス検索サービス「SERECT」について解説しました。

「SERECT」が不動産業界に浸透すれば、仲介会社との間にあった情報格差が解消され、貸主と借主の距離は一気に近づくでしょう。そうすれば貸主は効率よく物件を営業することができたり、借主は詳細な物件情報を入手できたりと、相互にメリットを享受できます。

さらに「SERECT」はリーシングだけでなく、新しく建てられるオフィスビルの企画にも影響を与える可能性が高いです。借主のニーズがより細かく貸主に伝わることによって、今後のオフィスのあり方は大きく変わっていくでしょう。