Column

「ワーケーション」施設に求めるものとは?

筆者:とある木下商会所員

オフィスにおける「働き方」という言葉が様々に議論されるようになって、実際のオフィス空間で実践されるようになっていったのが、2017年頃かと個人的には記憶している。少しずつそのカタチが見えてきた矢先の2020年にコロナ禍へと突入し、それまでの「働き方」という考え方、そのカタチが大きく変わらざる得ない状況となった。そしてこの「働き方」に加えて「働く場」という考えが、自然と議論されるようになったと感じている。

今、今年春頃の開業に向けて計画が進む「ワーケーション」施設の仕事に携わっている。昨今の「働き方」と「働く場」をどう解釈してデザインしていくか。。。プロジェクトチームの面々と様々に議論を重ねながら、着地点を探っている。
木下商会は今年、広島県呉市にサテライトオフィスを開設する計画がある。「働き方」と「働く場」をどのようにデザインしマネージメントしていくかを実践していく。

この「働き方」と「働く場」の一つのあり方として「ワーケーション」というジャンルが誕生したわけだが、そもそも「ワーケーション」って、、、「ワーク」と「バケーション」との造語ということだが、どうも個人的に違和感が残る。

この「ワーケーション」プロジェクトのお話をいただいてから、どのようなアプローチができるのか。ということを考えていた。その矢先に、他の仕事の納品で、山梨県山中湖に新しくオープンした「暮らしの香り」という施設を訪れた。

森の中にある隈研吾建築都市設計事務所による建物で、広大なお庭に面したテラスからは富士山が望める絶好のロケーションだ。

この日は早朝から車で現地へ向かい、納品に立会っていた。天候も良く、本当に気持ちの良い日だった。到着してすぐに作業に取り掛かっていた。事前の打ち合わせをしっかりしていたので、作業も順調に進む。お昼休憩の時間となり、用意していただいたサンドイッチとコーヒーを手に、関係者とどこで食べようか、、、と、場所を探した。
この時、明らかに「陽当たりがある気持ちの良い場所」を皆が自然と共通した意識として探していた。そして、自然とたどり着いたのが、外のウッドデッキテラスだ。陽当たりもよく、周辺の木々からは鳥の囀りも聞こえる。そして、目の前には富士山。チェアを移動させたり、ウッドデッキに腰掛けたり、各々相応にその場を整える。美味しいサンドイッチとコーヒーをいただきながら、それぞれの進捗状況を確認しあって、午後からの段取りを確認しあっている。
その時に、ふと「あ、これだ」と思ったのだ。「あれ、私、今、ワーケーションしてるかも?」と。

例えば、この場所が従来の企業の保養所的な空間で、オフィス家具やインテリアの仕様だったとしたら果たして、このような状況となっただろうか。。。これに似たような状況にはなるかもしれないが、でも、圧倒的に非日常感、気持ちよさみたいなものが足りない気がする。
そして、そのような場所においても、自然と気持ちの良いと感じられる場所を探すに違いない。。。そして、その時間こそが充実するのではないか。。。明らかに環境的な気持ちよさは大事だし、その方が、自然とコミュニケーションが円滑になるし、自然と共通する意識と感覚が感じ合えることも間違いない。(これは、理屈ではない部分で)

コロナ禍で、「働き方」と「働く場」のあり方は、現在進行形で、人それぞれに変容して行っている。働く人(働ける人)は、自宅であろうが、カフェであろうが、路上であろうが、、、どこででも働いている。その逆で、働かない人(働けない人)はオフィスにいたって状況は変わらない。

「ワーケーション」施設に求めるもの。
それはまず、非日常的な「気持ちの良さ」を感じられる場所であるかどうか。なのではないか。ロケーションはもちろん、インテリアや家具、空間的な居心地の良さも重要に思う。故に、この場所に従来のオフィスとしての要素はできるだけ排除されていた方が望ましいように思う。でなければ、わざわざこの場所まで来る必要性がなくなってしまう。
この場において、時間を共にする働く・働けるメンバーと共通した意識・感覚を自然と持ち合わせることができれば、自ずと、果たさなければならないミッションはコンプリートできるはずである。もちろん、その他に必要な機能や設備はある前提で。

気持ち良く、居心地よく、充実した時間を仲間と共有できる、こんな場所があれば、月に何度かは利用したい。。。

ワーケーションって。。。まだその答えは出せない。。。

https://officeinuck.jp/kinomoto/4317/
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