新しいテクノロジーがますますオフィスでの業務に欠かせない存在となる中、IoT(Internet of Things)が注目を浴びています。ICTによるデジタルなコミュニケーション手段に加え、IoTは物理的なアクションをインターネット上で共有できるようにすることができます。特に、スマートロックはその代表例であり、スマートフォンのアプリから鍵を開けることができ、管理や制御システムとの組み合わせによって業務の自由度が大幅に向上します。
本記事では、スマートロックの活用事例とその魅力について紹介します。
モノとしての「鍵」から「スマートロック」 へ
IoTの良い例は、ドアの「鍵」です。これまでの鍵と比較して、一般的に「スマートロック」と呼ばれるものです。
スマートロックのアイデアはアメリカから始まり、2015年には日本でも「Akerun」(Photosynth)、「NinjaLock」(ライナフ)、および「Qrio Smart Lock」(Qrio)などの製品が登場しました。後発にはなりますが、Bitkey(ビットキー)は累計120億円もの資金を調達し、社会から期待されているのが可視化されました
スマートロックの最大の特徴は、物理的な鍵が必要ないことです。開錠はスマートフォンなどのアプリで「開ける」ボタンを押すだけ、簡単にできます。インターネット上の操作で、鍵を簡単に発行、複製、および取り消しができ、解錠と施錠の記録も残ります。これはあらゆる規模のオフィスにメリットがあります。
しかし、スマートロックの真価は、「体験」の変化にあります。まず、所有の概念が変わります。物理的な鍵そのものではなく、鍵を操作する「権利」が与えられます。物理的な物をマネジメントするのが「管理」だったものが、権利自体を統制するものに変わりました。
また、すでに所有しているカードキーやスマートフォン内のFeliCa(ソニーが開発した非接触ICカードのための通信技術)にも権利を与えることができるため、ユーザーはアプリで操作したり、Suicaなどの交通系ICカードやビルのセキュリティカードに内蔵されているFeliCaで操作したり、Web上から遠隔で操作することもできます。
このように、解錠するために多彩なアプローチが設定でき、最適な方法で鍵を開けたり閉めたりすることができます。
鍵を使う行為は、自由で工夫のしがいのある行為にアップデートされていきます。
制御システムと結びついて働き方も自由に
スマートロックは、スケジューラーと組み合わせることで可能性が大幅に広がります。例えば、会議室やテレフォンブースの予約と鍵の開閉を連動させた運用管理を行うことで、現実とシステム上の利用状況のズレを解消することができます。
ビットキー社の新しいオフィスでは、入居するビル全体のセキュリティが同社のコネクトプラットフォーム「workhub」で制御されており、オフィスの中も外もシームレスな鍵体験を提供しています。
これまで大規模なビルでは、従来は共用部の受付、エレベータ前、会社の受付などで書類の記入やカードの読み取りが必要でしたが、このシステムではあらかじめ発行されたQRコードがあれば、誰とも対面することなく、ビルのエントランスから打ち合わせ予定の会議室までスムーズに誘導されます。また、顔認証機能で解錠もできるためあらかじめ顔登録ができていれば、そのQRコードは必要ありません。顔見知りならフリーパス!ってちょっと昔のオフィスで揶揄されていたことでしたが、今は新しい意味で捉えることもできますね。さらに、マスクしているしていないなど顔認証の精度を細かく設定することで、ゾーンごとにセキュリティのレベルをあげていくこともできます。
これらのシームレスな体験は、ビットキーと資本業務提携を締結したオフィス家具メーカーのオカムラを通じても提供されており、ITは業務の効率化だけでなく、私たちの働き方自体を変えていくことができるのといえます。