オフィスを移転するには、物件探し、契約状況の確認、引っ越し準備、入退去に伴う工事手配など、様々な仕事をこなす必要があります。物件の規模にもよりますが、社内社外を問わず多くの人が関わり、大きな会社だとプロジェクトチームを組むこともあるため、かなりの時間と労力を要します。
やることが多すぎて、何から始めれば良いのかわからず計画が立てられなかったり、人手が足りず苦労することもあるかもしれません。オフィス移転をスムーズに進めるためには、関係者との連携を深めることと、やることを事前にまとめ上げ整理しておくことが重要です。
そこでこの記事では、オフィス移転時に関わる会社や人物、移転する会社が事前に把握しておくべき「やることリスト」について解説します。オフィス移転を検討している会社の方は、是非参考にしてみてください。
関わる会社・人物
オフィス移転では、様々な会社や人物が関係します。移転計画に着手する前に、まず関係者を把握しておきましょう。
以下に関係する会社や人物を3つ紹介しますので、それぞれの役割をしっかり掴んでおいてください。
①不動産会社の営業担当者
オフィスの賃貸借契約に関わる、不動産仲介会社やデベロッパーの営業担当者は、オフィス移転を進める会社にとって重要な存在です。
不動産会社は、契約管理から入居するオフィスの案内、移転するまでのスケジュール調整、関係者の引き合わせなどを行います。特に移転先の物件の情報を得るためには、不動産会社とのやり取りは欠かせません。
担当者と連絡や打合せをこまめに行い、物件情報をできるだけ多く入手しておきましょう。
②ビル管理会社の営業担当者
入居するオフィスのビル管理会社の営業担当者は、入居前入居後に関わらず、多くやり取りすることになります。
入居するビルの館内ルール確認や、設備、清掃、警備の業務内容を把握したい際などは、ビル管理会社に確認しましょう。また、入居工事の際には一部オーナー指定工事として行う「B工事」を担当することが多く、工事のスケジュール調整などで打合せが必要になる場合があります。
③PM会社のマネージャー
PMとは、正式名称を「プロジェクトマネジメント」といいます。窓口となるのは、PMを専門で行う会社のマネージャーです。
オフィス移転は様々な仕事を同時に進行していくプロジェクトで、取りまとめが大変です。PM会社は、移転する会社側の立場になり計画全体をマネジメントしてくれます。費用はかかりますが、特に移転の経験が少ない会社にとっては、計画を進めるうえで心強いパートナーとなるでしょう。
移転しようと思ったらはじめにすること
オフィスの移転を決めた場合に、はじめにすることを以下にまとめます。
①現在のオフィスの契約確認
最初に確認するのは、現在のオフィスの賃貸借契約書の内容です。中でも重要なのは、以下の2点です。
- 契約期間はいつまでになっているか
- 解約予告はいつまでにすれば良いか
期間満了での退去であれば問題ありませんが、中途解約する場合、貸主に対して前もって予告しなければなりません。一般的には6ヶ月前予告とされていますが、契約書内に解約する場合の規定が記載されていますので、必ず目を通しておきましょう。そのうえで移転日と退去日に大きなズレが生じないよう、スケジュール調整する必要があります。
退去日に対して移転日が早すぎると、無駄な賃料を払うことになってしまいますし、逆に移転日が遅すぎると、オフィスの稼働が間に合わず、営業に支障をきたしてしまいます。特に後者のケースは絶対に避けなければならない事態です。そのため契約書内容の確認は、移転を決めるうえで一番に行わなければなりません。
②次のオフィスに必要な条件の洗い出し
移転するオフィスに必要な条件の洗い出しも、早い段階で行う必要があります。何人が入居するのか、面積はどれほどあれば良いのか、立地条件はどうするのかなど、具体的に決まっていないうちに物件探しをしても難航するだけでしょう。
必要な条件がまとまっていない中で無理して移転先を決めてしまえば、思わぬ後悔を招く可能性もあります。現在のオフィスがそのまま移転する場合、規模を拡大または縮小して移転する場合、一部の部署のみ移転する場合など、様々なパターンが考えられますので、会社の方針を踏まえつつ移転先オフィスの条件を検討しましょう。
また、移転先のレイアウトプランの規模によって入居工事の金額が大きく変わります。予算を把握するうえで重要な要素となりますので、どんなレイアウトにしたいかのイメージも掴んでおくと良いでしょう。
移転やることリスト
移転プロジェクトを進めるための「やることリスト」を以下にまとめます。
現在のオフィス、次のオフィス、原状回復工事、入居工事の4つの項目に分けてリスト化していますので、移転する際の参考にしてください。
なお、PM会社と契約している場合、タスク管理やスケジュール調整の大部分を担当マネージャーが行ってくれますが、その場合でもすべてお任せにはせず、進捗状況の把握はしておきましょう。
①現在のオフィスに関わること
前項でも説明しましたが、オフィス移転を進めるうえで、最初にすべきことは現在入居しているオフィスの契約状況の確認です。さらに退去する際は原状回復が必要になりますので、原状回復の内容確認も重要なポイントです。
やることリスト
- 賃貸借契約書を確認し、退去可能な日程を把握する
- 退去日を決定する
- 次のオフィスに入居可能な日程を確認する
- 不要な物の廃棄手配をする
- 原状回復の手配をする
②次のオフィスに関わること
次のオフィスでも契約内容の確認がとても大切です。
移転するうえでオフィスのレイアウトを決めていく必要がありますが、現状のレイアウトに近いものが良いのか、新しい形が良いのか、会社の方針によって変わりますので、社内でしっかりと打合せしましょう。また社外の人への連絡、特に顧客への連絡は抜けがないように確実に行いましょう。
やることリスト
- 移転先のオフィスを決める
- 社内および社外の関係者へ連絡する
- 賃貸借契約書の内容を確認する
- レイアウトの検討をする
- 必要な什器、備品の手配をする
- ネットワーク、セキュリティの移転手続きをする
- 引越し業者の手配をする
- 住所変更など各種届出を提出する
- 入居工事の手配をする
③原状回復工事に関わること
退去するオフィスの原状回復工事は、退去日に間に合わせるように日程調整することが何より大事です。
やることリスト
- 賃貸借契約書を確認し、原状回復の内容を把握する
- 工事業者に見積もり依頼をする
- 見積もりの金額が適正かどうか精査する
- 工事の日程調整をする
- 旧オフィスのビル管理会社と工事の打合せを実施する
④入居工事に関わること
入居するオフィスのレイアウト工事も、原状回復工事と同じく日程調整が重要なので、入居日に合わせたスケジュールを組みましょう。そのためには、レイアウトを早めに確定させる必要があります。
やることリスト
- 工事業者と打合せ、レイアウトを確定する
- 新オフィスのビル管理会社に工事のルールなどの確認をする
- 工事業者に見積もり依頼をする
- 見積もりの金額が適正かどうか精査する
- 工事の日程調整をする
- 新オフィスのビル管理会社と工事の打合せを実施する
まとめ
以上がオフィス移転時に把握しておきべき内容です。
やることが多く、初めて移転する会社の方は戸惑ってしまうかもしれません。余裕を持った計画を立て、項目に抜けがないよう、一つずつ丁寧に進めていくことが大切です。また、リストの項目にある程度優先順位をつけたり、入居前と後でグループ分けしておくのも良いでしょう。
そして何より重要なのは、多くの人が協力して進めていく仕事ですので、関係者一人ひとりがチームワークを意識した行動を取ることです。