賃貸していたオフィスを解約する場合、原状回復した上で退去するのが基本です。ただし原状回復には多くの費用がかかるため、できれば居抜き退去してコスト削減したいと考える企業も多いでしょう。
しかし実際に居抜き退去を実現するためには、どのような手順で進めれば良いのか分からない人もいらっしゃると思います。
そこで本記事では、居抜き退去を検討している企業の方へ向けて、居抜き退去を行う手順と募集期間などについて、具体的なスケジュールについて解説します。
居抜き退去は4ヶ月以上前から準備をしよう
賃貸オフィスを解約する場合、3~6ヶ月前にオーナーへ申し入れするのが一般的です。解約予告の規定は、入居時にオーナーと取り交わした賃貸借契約書に明記されていますので、まず契約書の内容を確認するようにしましょう。
冒頭でもお話ししましたが、入居時に特約を交わしていた場合などは除き、オフィスを退去する際は原状回復を行わなければなりません。どうしても居抜き退去したい場合は、事前にオーナーと交渉して承諾を得る必要がありますが、仮に解約予告が3ヶ月前までだったとして、3ヶ月前ギリギリに予告しても居抜きの承諾は得られないでしょう。
オーナーとしては、居抜きで入居してくれるテナントの目処がつかないまま、居抜き退去を許してしまえば、大きなリスクを背負うことになりますので、余程の事情がない限り承諾されることはないでしょう。そのため、オーナーと居抜き退去の交渉をする場合は、最低でも1ヶ月は余裕を見ておく必要があります。3ヶ月前予告であれば、4ヶ月以上前から準備をするようにしましょう。
具体的には、以下のスケジュール表を参考にしてみてください。
居抜き退去のやることタスクとスケジュール
次に居抜き退去が決まった場合にやるべきことを、上のスケジュール表に沿って解説していきます。
解約届け提出・居抜きの申請
移転先のオフィスが決まった後にオフィスの解約届けを提出しましょう。その際に居抜きで退去することが可能か、オーナーと交渉するようにしてください。スケジュール表の通り進める場合、4ヶ月前までに交渉する必要があるので、4月末までに解約届けを提出して交渉する必要があります。
オーナーの承諾がないまま、借主側で勝手に次のテナントの誘致(SNSを利用した募集ばど)を進めてしまうと、後でトラブルに発展する可能性がありますので、必ず事前に承諾を得るようにしましょう。
次の募集条件が決まるのを待つ
居抜き退去の承諾が得られたら、オーナー側の募集条件が決まるのを待ちましょう。スケジュールにある通り、5月頃にはこの段階に進んでいなければなりません。
賃料の設定などはオーナーの希望もありますので、条件が確定しないうちに勝手に借主側で次のテナントを募集してはいけません。オフィスビルの賃料の相場は年によって変動しますので、今と同じ条件で募集できるものと考えず、しっかりとオーナーの意向を確認してから進めるようにしましょう。
居抜き募集開始・原状回復の見積もり
オーナー側で募集条件が決まったら、居抜き募集の段階に移ります。スケジュールとしては、5月末を目安にしましょう。
この際、募集の方法についてオーナーへ事前確認して、自分でも募集してみることをおすすめします。
たとえば、SNS上での拡散や居抜きサイトへの掲載など、現在はインターネットを利用して手軽にテナントを募集する手段があります。また居抜きで入居可能なテナントが見つからなかった場合に備え、並行して原状回復の見積もりを取っておくようしましょう。
居抜き募集期間 約2〜3ヶ月
5月末頃に募集を開始した場合、6月〜8月の3ヶ月間がメインの募集期間になります。内見に来た企業に悪い印象を与えないよう、オフィスの清掃はしっかりと行ない、綺麗な状態を保っておくようにしましょう。
また、OA機器など機械モノに関しては、取扱説明書や保証書などを事前に用意しておくことをおすすめします。使用後すぐに故障したり、動作しなかったり、入居後のトラブルを避けるために内見の際に動作確認などを行っておくのも良いでしょう。
オフィス移転・引越し(次の入居者が決まった場合)
次の入居者が決まった場合は、引越しの準備を進めましょう。オフィス移転には多くの費用がかかりますので、引越し業者へ見積もりを取る際は、何社か相見積もりを取ることをおすすめします。
また移転先の入居手続きも並行して進めていく必要があります。居抜きで入居する場合はさほど手間はかかりませんが、まっさらなオフィスに入居する場合は、レイアウトの作成から各業者への工事発注・日程調整、移転先の管理会社との打合せなど、やることがたくさんあります。早めに進めていかなければ、営業開始が間に合わなくなる可能性もありますので注意しましょう。
原状回復発注(次の入居者が見つからなかった場合)
オーナーとの交渉内容にもよりますが、9月頃まで待っても居抜きで入居できるテナントが見つからなかった場合は、居抜き退去を断念する必要があるでしょう。
その場合、通常の手順通り、原状回復して退去しなければなりません。原状回復工事はオーナー指定の工事業者で実施するケースが多いので、ビルの管理会社への確認も必要です。
居抜き退去を決めたら期間に余裕をもって
居抜き退去したい場合は、できるだけ早めにオーナーと交渉することをおすすめします。仮に6ヶ月前に予告したとしても、募集期間はあまり長く取れないので、解約日までに次のテナントが決まらない可能性もあります。
オーナーの意向にもよりますが、必ず居抜き退去できるとは考えず、原状回復する可能性も視野に入れつつ進めていったほうが良いでしょう。
また、オーナーの承諾を得る前に、居抜きを条件としたテナント募集をかけるのは絶対にやめましょう。賃貸オフィスを退去する場合は、原状回復するのが前提であり、居抜き退去が認められるのはあくまでレアケースと理解しておいてください。
本記事が居抜き退去を検討している企業の方の一助になれば幸いです。